
このたびの大雨で被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
柏市では罹災証明書・被災届出証明書の受付や、被災世帯への市営住宅の一時提供などが行われています。(※1)(※2)
まずは柏市の公式情報のご確認と、必要なお手続きを優先してください。
令和8年8月の千葉豪雨では、被災された方のおよそ2人に1人が、浸水想定区域の「外」で被害に遭ったとみられています。(※3)
柏市を含む一部の市区に限ると、その割合は55.7%にのぼりました。ハザードマップ上では色のついていない、いわゆる「白い」場所です。
柏市で起きたのは川があふれる災害ではなく、雨が下水道の処理能力を超えてあふれる「内水氾濫」です。
この記事では、外水氾濫と内水氾濫の違いを整理したうえで、柏市のハザードマップで具体的にどこを確認すればよいかをまとめます。
ウェザーニューズが、緊急アンケート10,009件とウェザーリポート9,938件、あわせて約2万件の浸水被害報告を分析しています。(※3)
分析では、国や自治体が定める浸水想定区域、国土交通省が算出した低位地帯、そして8月13日12時から14日0時までの積算降水量に、寄せられた被害報告を重ね合わせました。(※3)
なお、千葉県内の被害の全体像については、国土交通省が継続して状況を公表しています。(※4)
その結果は、地図の使い方を考えるうえで示唆的でした。
柏市・千葉市中央区・緑区・八千代市では、報告の55.7%が、浸水想定区域の外、あるいは低位地帯とされていないエリアからのものでした。(※3)
被災された方の2人に1人は、地図上で「白い」場所にいたことになります。
雨で家が浸かる経路は、大きく分けて2つあります。
川があふれて外から水が来る外水氾濫と、降った雨がその場からはけずにたまっていく内水氾濫です。
柏市内でも、川からは離れた場所で道路に水がたまる様子が見られました。
短時間に集中した雨を側溝や下水道がさばききれず、周りより低いところへ水が集まる。いわゆる内水氾濫です。
ここが今回のいちばんの肝なので、少し詳しく説明します。
水害は、水がどこからあふれてくるかによって大きく2つに分けられます。
川の水が堤防を越えたり、堤防が壊れたりして、川の外側へあふれ出すものです。
いわゆる「川の氾濫」で、ニュースで大きく報じられるのはたいていこちらです。
洪水ハザードマップが想定しているのは、この外水氾濫です。
一方の内水氾濫は、川があふれなくても起こります。降った雨が下水道や排水路の処理能力を超えてしまい、行き場を失った水が道路や敷地にたまる現象です。
「内水」という言葉は、堤防の内側、つまり私たちが暮らしている側にある水という意味です。
川の水(外水)に対して、街の中の水(内水)というわけです。
ひとつは、単純に雨の量が排水能力を超えるパターンです。
もうひとつは、川の水位が上がったことで下水道が川へ水を吐き出せなくなり、逆流してしまうパターンです。後者は川があふれていなくても起こるため、「川は大丈夫そうだったのに浸水した」という状況が生まれます。
土の地面は雨をある程度吸い込んでくれますが、アスファルトや建物に覆われた市街地では雨がほとんど染み込みません。
降った分がそのまま短時間で排水路に集中するため、都市化が進んだエリアほど内水氾濫は起きやすくなります。
洪水ハザードマップは、原則として河川が氾濫した場合を想定してつくられています。
川からの距離、堤防の位置、地形。
これらを前提にすれば精度の高い予測ができますし、実際に河川氾濫型の被害はよく当たっています。
しかし今回、千葉県内では1時間に約110ミリという猛烈な雨が観測されました。(※5)
国内の下水道が一度にさばける雨の量は、数年に1度程度しか降らないような規模を目安に決められています。(※6)
その想定を大きく超える雨が短時間に落ちれば、川から遠くても、周囲より低くなくても、行き場を失った水は路上にあふれます。
ここが最も誤解されやすいところです。
洪水ハザードマップが白い=水害リスクがない、ではありません。
ハザードマップ上で白いのは「河川氾濫の想定では浸からない」という意味であって、内水氾濫はまったく別の話です。
55.7%という数字は、その差がそのまま被害として表れたものと読むことができます。だからこそ、洪水と内水の2枚を必ず並べて見てほしいというのが、今回の最大の教訓だと考えています。
ただし、内水ハザードマップもまた一定の降雨条件を前提にした想定である点は押さえておく必要があります。想定を超える雨が降れば、想定外は起こり得ます。ハザードマップは安全証明書ではなく、「起こりやすい場所の当たりをつけるための道具」だと捉えるのが実務的な向き合い方です。
「柏市 ハザードマップ」で検索して市の公式サイトにたどり着くと、実は複数のページに分かれていることに気づきます。まずは全体像を整理します。
地図の種類 | 何を想定しているか | どう使う1枚か |
web版防災・ハザードマップ(※7) | 洪水・内水・土砂災害・液状化・揺れやすさなどを地図上で重ねて確認できる総合版 | まずここを見るのが早い |
洪水ハザードマップ(※8) | 河川が氾濫した場合の浸水範囲 | 河川氾濫のリスクを確認する基本の1枚 |
内水ハザードマップ(※9) | 雨水が排水しきれずあふれる場合の浸水 | 今回のような短時間の大雨で効いてくる1枚 |
水害(浸水等)履歴(※10) | 過去に実際に浸水した場所の記録 | 想定ではなく実績。地図と必ず併読を |
なお、柏市は津波および高潮の浸水想定区域外にあたるため、津波・高潮のハザードマップは用意されていません。(※7)
柏市で確認すべきは、水害(洪水・内水)/土砂災害/地震(液状化・揺れやすさ)の3系統と考えるとわかりやすいと思います。
とくに見落とされがちなのが、下から2つ目の内水ハザードマップです。洪水のほうは自治会の回覧や住宅購入時の説明で目にしたことがあっても、内水のほうは見たことがない、という方は少なくありません。
この記事では、水害を「川があふれる外水氾濫」と「降った雨がはけない内水氾濫」の2つに分けて整理してきました。
柏市内の特定の地区名を挙げて「このエリアが危ない」といった決めつけはしませんでした。
同じ柏市内であっても、高低差数十センチで結果が分かれるのが内水氾濫であり、柏市を地区単位でラベリングすることは実態を映さないからです。
ハザードマップは不安を煽るものではなく、「柏市でのリスクを正しく理解し、前もって備えて安心して暮らすためのツール」です。
複数の地図を重ね、現地で高低差を確認し、雨の日の様子を見る。
それだけで防げる後悔は、かなりあると思っています。
本記事は以下の公的機関・報道等の情報をもとに作成しています(いずれも2026年8月時点)。
ハザードマップは随時更新されますので、実際にご確認の際は必ず各機関の最新版をご覧ください。
※1 緊急情報一覧|柏市
※2 被害状況等|柏市
※7 柏市web版防災・ハザードマップ(洪水・内水・土砂災害・液状化・揺れやすさを地図上で確認できます)
※8 柏市洪水ハザードマップ
※9 柏市内水ハザードマップ
※10 水害(浸水等)履歴|柏市
ハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」|国土交通省(全国の水害・土砂災害情報を重ねて確認できます)
不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化|国土交通省 報道発表(2020年8月28日施行の宅建業法施行規則改正)
※3 令和8年8月千葉豪雨、2人に1人が浸水想定区域"外"で被災か|ウェザーニュース(緊急アンケート10,009件・ウェザーリポート9,938件の分析。本記事の「55.7%」はこの調査によるものです)
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